Ep.7 映画ロケ地案内〜ニューヨーク近郊のビーチ〜|ニューヨーク映画案内

ニューヨーク映画案内

「ニューヨークの夏」と聞くと、何を思い浮かべるでしょうか。私は、眩しい日差しに映えるコニーアイランドのカラフルな看板や、遊園地が頭に浮かびます。ニューヨークにはコニーアイランド、ブライトンビーチ、ロッカウェイビーチなど、海水浴客で賑わうビーチが多数存在し、映画の舞台としてもよく登場します。今回は、映画のロケ地を通して、ニューヨーカーの夏の遊び場とも言えるビーチ達をご紹介したいと思います。

コニーアイランドはブルックリンの最南、マンハッタンビーチとブライトンビーチが並ぶ海岸線の一番西に位置しています。地下鉄でのアクセスも良く、遊園地のルナパークや、ネイサンズというホットドッグの早食い大会で有名な店もここに位置しています。

そんなコニーアイランドが舞台の映画、まずは2015年製作の『ブルックリン』。1950年代、アイルランドから単身ニューヨークのブルックリンに移住する若い女性の物語。慣れない大都市で苦労するエリスを、シアーシャ・ローナンが好感的に演じています。コニーアイランドはそんなエリスと、ボーイフレンドのトニーのデートシーンで登場。鮮やかな緑の水着が印象的です。

コニーアイランドは他にも、1959年製作のメロドラマ映画『悲しみは空の彼方に』の冒頭シーンや、2017年のウディ・アレン監督『女と男の観覧車』にも登場しています。

コニーアイランドと木板の遊歩道、ボードウォークでつながったブライトンビーチも、映画の常連です。最近では、2024年製作の『アノーラ』に登場。鮮やかな夏から一転、寒々とした冬のブライトンビーチを観ることができます。ロシア系移民が多く住むエリアに接しているので、海水浴に向かう前にロシア系スーパーで食べ物を調達するのもおすすめ。

そこからさらに東には、クイーンズのロッカウェイビーチが位置しています。ジョン・F・ケネディ空港からも近いこのエリアは、昔から様々な文化の融合した住宅街。マンハッタンからフェリーで向かうこともできます。

このエリアが舞台の映画と言えば、1987年製作『ラジオ・デイズ』。ウディ・アレン監督の自伝的映画で、少年時代を過ごした1940年代のロッカウェイビーチを舞台に、ラジオに絡んだ様々なエピソードが語られます。

ラジオという懐かしの媒体しかり、近所との交流(時にいさかい)や当時の流行りの音楽など、決して自身の経験ではないのに郷愁を感じさせてくれる一作です。時々映し出されるロッカウェイの海岸が、とても良いバックドロップとなっています。

そして、ニューヨークの夏にはロングアイランドも欠かせません。クイーンズの東隣に位置するロングアイランド郡は、ニューヨーク市の一部ではありませんが、街で働く人々のベッドタウンや富裕層の豪邸、そして避暑地として有名です。電車または車でアクセスすることができます。

特に、避暑地として非常に人気が高いのがハンプトン。カフェやギャラリー、高級スーパーなどがあり、暑苦しい街の喧騒を逃れた人々がゆったりとバカンスを過ごしています。そんなハンプトンが舞台の映画は多く、『アニー・ホール』『恋愛適齢期』ドキュメンタリーの『グレイ・ガーデンズ』などがその一部です。

そしてロングアイランドのビーチが印象的に登場する映画といえば、『エターナル・サンシャイン』。ロングアイランドの最東端モントークの海岸がロケ地として使われました。冬の海岸をじゃれあいながら歩くジョエルとクレメンタイン。そして二人は人気のないビーチハウスに忍び込みます。風の強い冬のビーチと、心がざわざわしてくるカットが見事にマッチして、ストーリーの切なさをより強調させるシーンです。

ニューヨーク近辺のビーチと、その様々な顔を切り取った映画を紹介させていただきました。私の経験からすると、ニューヨークのビーチは人目を気にせず、自由気ままに楽しんでいる人が多い印象です。近所に住むおばあさんがふらっと水着でやってきて日光浴、なんて場面によく出くわします。ニューヨーカーのいつも着飾らない態度が、夏のビーチにも反映されているのでしょうか。


『ブルックリン』
監督:ジョン・クローリー 2015年製作 / 112分 / アイルランド・イギリス

1950年代、アイルランドの小さな町に住むエイリシュは、単身渡米を決意する。しかし大都会のニューヨークは、故郷とあまりに違いすぎて・・・。徐々に新生活に慣れていく様子や、新しい仕事、友人や恋人との出会い、そして故郷と新天地の間で揺れる心情を丁寧に描いた一作。

『ラジオ・デイズ』
監督:ウディ・アレン 1987年製作 / 89分 / アメリカ

第2次世界大戦直後のアメリカ・ニューヨーク。ユダヤ系移民の家庭に生まれ育った少年ジョーの目線を通して、賑やかで温かい市民生活や当時のラジオ文化をユニークに描くノスタルジー映画。ミア・ファローやダイアン・キートンなど、ウディ・アレン映画でお馴染みの俳優陣が登場する。

『エターナル・サンシャイン』
監督:ミシェル・ゴンドリー 2004年製作 / 107分 / アメリカ

バレンタイン直前に別れてしまう恋人のジョエルとクレメンタイン。その後、ジョエルは「クレメンタインはあなたとの記憶を消しました」という謎の手紙を受け取る。記憶と恋愛を取り扱った斬新なストーリーが反響を呼び、2004年度アカデミー脚本賞を受賞した。

コニーアイランド観光案内
https://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g60827-d106173-Reviews-Coney_Island-Brooklyn_New_York.html

ロングアイランド観光案内
https://www.tripadvisor.jp/Attractions-g1501343-Activities-Long_Island_New_York.html

この記事を書いた人
はるこ

神奈川県出身。短編映画を国内外で制作しています。最新作「Ramen Symphony」は現在、映画祭にエントリー中。好きな映画のジャンルは旧作、時代物、ヒューマン系など。最近はドキュメンタリーにもハマっています。

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