映画を予習する効果|私と映画

私と映画

割とよくあることだと思うのですが、アート系の映画には、セオリー通りの展開ではなく、複雑で難解なものがあります。そうした難解な映画を劇場で初見で観ると、観終わったあとにうまく理解できないことがあるのです。そしてそういう難解な映画に限って上映時間が長いことが多いんです。

難解なストーリーを理解しようとスクリーンの隅々まで気を配り、字幕を追いつつ映像の美しさも楽しむ…なかなか高度なことをしているなと思います。そんな状態なので、中盤あたりから集中力が切れて、ストーリーを追うので精一杯になってしまうことも。消化不良で、ふわっと終わってしまうこともあります。

感想自体が雲や霧のようにふわふわとして輪郭のない状態で終わる。あとで、他の人の感想や考察を参考にしつつ、自分の中で輪郭をはっきりさせることもあれば、そのままふわっとしておくこともあります。

そして、しばらくしてもう一度観たときに、急に輪郭がはっきりして、色が見え、感動するなんてこともよくあります。または、その作品に似たテーマやプロットの映画を観たときに、突然理解が進むこともあります。

そんな体験をした人も多いのではないでしょうか。

先日、東京国際映画祭(2024)で、巨匠フェデリコ・フェリーニの名作『8 1/2』を劇場で鑑賞できる機会がありました。難しい映画のイメージがあり、「意味がわからなかった」という声が多い作品なので(そんな作品ばかり好んで観てしまうのですが)、事前に配信で観て予習してみることにしました。

今までは自宅で何度も観た好きな映画を劇場で観るのが好きでよくやっていたのですが、未鑑賞の映画を劇場で観る前に、あえて配信で予習するのは初めてだったので、ちょっとした実験みたいな感覚でした。

時間がなかったので、通勤中に少しずつ観ました(通勤中に映画を観ることについてはまた詳しく書きたいと思います)。過去と妄想と現在が複雑に入り組んだ構成、登場人物も多く、予習してよかったとシンプルに思いました。

そして迎えた劇場鑑賞では、余裕を持って全体を俯瞰しながらリラックスして映画を楽しむことができ、細かい発見も多くありました。

実は時間の都合で途中までしか予習できなかったのですが、良いスタートが切れ、集中力を保ちながら後半も余裕を持って観ることができました。

新作については予習が難しいですが、やっぱり少しでも作品の背景を予習しておくと楽しさが増すと再実感しました。

ちなみに、肝心の『8 1/2』は本当に素晴らしくて、とても好きな作品となりました。特に冒頭のシーンとラストシーンが最高です。欲望と混沌と困惑の末のあのラストシーンは本当に気持ち良い。とても人間らしくて、スカッとする楽しい映画でした。今後また映画館で上映されたら、観に行くと思います!

この記事を書いた人
ミドリ
カシミヤフィルム 代表

映画とミニシアターが好きなおばちゃんです。 好きな監督はヴィム・ヴェンダース、ジム・ジャームッシュ、ジャン=リュック・ゴダールなど。ヒューマンドラマ、音楽が素敵な映画が好物です。 その他、海外旅行、喫茶店巡り、猫、音楽が好き

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