カシミヤフィルムのメンバー、ふじもとはるこ監督の短編映画『おくさま』が独立映画を映画館で上映するイベント「第四世界」で上映されることが決まりました!他にも面白い作品をつくる新鋭監督の作品が観られます!ぜひ、足をお運びください。
短編映画「おくさま」
時間|12月7日(日) 12:00-18:30
会場|横浜シネマ・ジャック&ベティ
料金|各プログラム一律1,900円(税込)※映画ランド及び劇場窓口にて事前/当日販売
※お席は全席自由席です。
※特別興行につき各種割引および招待券の使用、駐車券等のサービスは適用できません。
大正時代を舞台に若い女性二人の交流を描く
1920年代の東京。女中のカヨは、裕福な若夫婦宅に奉公している。華やかな生活を送る若奥様を羨むカヨだったが、現実は見かけとは違い・・大正時代を舞台に、歳は近いが立場の異なる女性二人の交流を描いた作品。
『おくさま』レビュー
家庭やその時代の社会、身の周りには常に慣習やヒエラルキーという潜在的な束縛があり、それらは時に残酷で、それらの隙間には時に魅惑が宿る。
この短編作品は、近代日本に時代設定しながら、もしかしたら世界中で共感を得られる可能性を持っているという予感にゾクゾクさせられた。それは女性キャストの表情の演技に依るところが大きい。最後のカヨのシーンは、名付けようのない美しさを持っているし、続編か長編への発展があるとすれば、彼女たちの心理と行動がどう展開して周囲と関わっていくかを想像するとワクワクする。その想像はサスペンスから大河ヒューマンドラマまでに及び”映画的興奮”を孕んでいる。
大正モダニズムの渦中で、女性が社会的地位の向上を求めて声を上げていたことを改めて知りました。女中と奥様の関係性が上司と部下のようでありながら、女性ならではの絆があることに美しさがあるようにも感じます。奥様と女中の関係性の変化や心情の変化が、社会的な背景と照らし合わせながら描かれていて、当時の女性の立場の難しさや、そこから立ちあがろうとする気概に女性の芯の強さも感じました。 現在でも女性と男性の社会的な立場の格差が存在する中、大正という時代に立ち返って女性の権利獲得までの歴史を再確認することは、格差を再確認することにもつながると思います。 イヤリングを着けた後に立ち上がる女中の姿から、静かな覚悟が感じられたのがとてもよかったです。
僅か15年間の大正時代。その短い時代に僅かばかり産声を上げた(上げかけた)個人という概念。1人のおくさまと彼女に仕え為1人の女中さん。2人を写す鏡が2人の関係の変化を表しています。1回目は、2人の関係は完全におくさまと女中。おくさまは矢継ぎ早に女中かよちゃんに仕事を頼む。まるでそれがおくさまの地位をはっきり示すように。2回目、2人は一緒に鏡に写ります。おくさまは、かよちゃんに「私とかよちゃんは似ていると思うの。」意味のない戯言のようですがここで初めておくさまはかよちゃんの存在を認識し、2人の個人として鏡に写るのです。3回目は、、さらに2人の関係が変化していきます。25分の短い上映時間の中に大正の社会が浮かび上がってきました。
大正と令和、時代は隔てたが愛に対する態度というものは、さして変わらない。愛されたいか。それとも、愛したいか。夫婦にはどちらも必要か。愛とはtakeか、それともgiveか。そんなことをとりとめもなく考えた。
思うに、takeだけでは愛にはならない。giveすることで、人は初めて愛を形成できる。giveが愛になるなら、カヨは奉公しながらも長谷川夫妻、とりわけ「おくさま」からの愛をもらっている。だから、カヨは「おくさま」を嫌いになれないんじゃないかと思った。
愛とは二人の関係を光で照らし出すものだ。光ができるということは、同時に周囲に闇を作り出すことでもある。だから外側からでは、二人の内側にある愛は見ることができない。長谷川夫妻の関係はもちろん、カヨと「おくさま」の関係も、内側からそっとのぞいてみてほしい。
はるこさんとは、知り合った当初から濃いお話をたくさんしました。はるこさんの好きな映画、映画製作に対するお話など。そんなはるこさんが作った映画ってどんな映画なんだろう、と楽しみにしていました(NYで撮った作品は事前に拝見していましたが、日本を舞台にした映画を観るのは初めてでした。)まず、ロケ地、セット、衣装など本当に凝っていて素敵でした。大正ロマンの世界にタイムスリップしたような気分。裕福で何不自由無い生活をしているように見える若い「おくさま」と、影で見守る女中さんの物語。クリームソーダーはどんな味だったんだろう?蓄音機で聴くレコードはどんな音だったんだろうと想像しながら楽しく観ました。『小さいおうち』が好きな方はハマると思います(私は大好きです)
カシミヤフィルム代表 みどり
監督プロフィール

藤本 東子
Haruko Fujimoto
神奈川県出身。ニューヨーク市立シティーカレッジ映像制作科卒業。国内外で短編映画を監督、製作。2024年、カナダ人監督の短編映画プロデュースを担当。現在、イギリスでの短編映画製作に向けて準備中。